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VUCAの時代に管理職の「マネジメントスタイル変革」の一歩はどう踏み出すべきか?

2023年11月23日 NMATの活用 マネジメント/管理職とは 管理職登用

「Change Management (チェンジマネジメント)」の言葉に代表されるように、現代のビジネス環境下においては、多くの企業が変革の必要性に迫られています。

元来チェンジマネジメントは1990年初頭、長い不況が続いていた当時のアメリカで、「BPR(Business Process Reengineering)」という経営の抜本的変革手法が発明されたことに端を発し、普及しました。

当時の状況は、先々が見通しにくいVUCAの時代といわれる現代ビジネス環境とも共通点があるでしょう。日本企業は、既存のビジネススタイルや業界の常識にとらわれない組織への転換が求められています。その変換の鍵として、管理職層のマネジメントスタイル変革に照準を合わせている企業も多いようです。

ただし「変革」の必要性は頭では分かっていても、現場の管理職層にどのようなアプローチをすれば、具体的な変化を促せるか分からないという声も聞かれます。今回は、現代の日本企業におけるマネジメント層の実態をひもとき、変革の鍵を模索していきます。

企業課題から、求められるマネジメントスタイルを探る

唐突にマネジメントスタイルそのものについて考える前に、まずは現代の企業が抱えている組織課題について考えてみます。求められるマネジメントスタイルは、解決すべき組織課題によって変わるからです。

 2023年に人事担当者に会社の組織課題について尋ねた弊社の調査では、選択数が多い順に、1位「1. ミドルマネジメント層の負担が過重になっている(65.3%)」、2位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない(64.0%)」、3位「3.中堅社員が小粒化している(63.3%)」という結果となりました。

同じ設問に対する管理職層の回答は、1位「1. ミドルマネジメント層の負担が過重になっている(64.7%)」、2位「3.中堅社員が小粒化している(64.0%)」、3位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」「5.新価値創造・イノベーションが起こせていない」「8.新人・若手社員の立ち上がりが遅くなっている(62.7%)」でした。

図表1 Q下記の項目それぞれについて、あてはまる程度をご回答ください(単一回答・人事担当者 n=150 管理職 n=150)
(「よくあてはまる」「ややあてはまる」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」の4肢から単一選択)
※選択率は「よくあてはまる」「ややあてはまる」の合算 

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出所:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」

 

「1. ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」の選択率が1位になったのは人事担当者の回答でも管理職層の回答でも、本調査をスタートした2020年から初めての結果となりました。

また、管理職層で3位となっている「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」については、2020年ごろから毎年の調査で選択率が上位にくる項目です。さらに「5.新価値創造・イノベーションが起こせていない」は、2022年の調査から人事・管理職層とも順位が上がってきています。

ここ数年のビジネスの世界では、「当たり前」といわれていた常識が次々と覆されています。海外新興企業の参入による業界地図の変化、創業100年企業の業績の傾き......。環境変化で生じたネガティブな事象は、枚挙にいとまがないでしょう。

経営者、新入社員など立場を問わず環境変化を感じている状況で、現場での判断を指揮する管理職層の重要性が増しているのは想像に難くありません。今までの延長線上にはない新価値の創造に取り組むマネジメントスタイルが求められていることが、この調査からも示唆できるでしょう。

日本企業の管理職層が認識する組織状況

では、当人である管理職層は自身が担当する組織状況をどのように認識しているのでしょうか。
前節では、「5.新価値創造・イノベーションが起こせていない」の選択率が、ここ最近の調査で上がっているとお伝えしました。

一方で、そうした新価値創造への動きのキーとなる管理職層の問題意識には、やや乖離が生じています。

同調査での「管理職として重要だと考えている役割は何か?」という問いに対する管理職層の回答は選択率が高い順に「1.メンバーの育成」「3.部署内の人間関係の円滑化」「5.担当部署の目標達成/業務完遂」という項目が並びます。

図表2
人事担当者へ:Q管理職にどのようなことを期待していますか。お勤めの会社で管理職に最も期待しているテーマを以下から選択してください。

管理職層へ:Q管理職としてあなたが重要だと考えている役割はなんですか。以下から選択してください。
(人事担当者 n=150 管理職 n=150)

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出所:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」

 
新価値創造よりも短期的な成果をあげることに注力せざるを得ない、管理職層の実態が浮かび上がってきます。組織からの要請と管理職層の認識にこのようなギャップがあると想定されるなかで、組織の実態は果たしてどのようなものなのでしょうか。

「担当している組織の状況」を聞いた設問では次のような結果となっています。

図表3 Q:以下の自律共創型組織に関する事柄について、ご自身のお考えにあてはまるものをお選びください。(単一回答・人事担当者 n=150 管理職 n=150)

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出所:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」

各設問に対して「そう思う」「ややそう思う」と回答した人は、「1.会社から自律共創型組織に移行することを求められている」が全体の61.3%、「2.自分の所属組織は自律共創型組織であることが必要だと思う」が69.7%、「3.実際に自律共創型の組織運営に取り組んでいる」は49.4%という結果になりました。

とりわけ「2.自分の所属組織は自律共創型組織であることが必要だと思う」という項目の選択率の高さから、管理職自身が考え、判断しようとする自覚があるのをご理解いただけるのではないでしょうか。

マネジメントスタイル変革を阻むものの正体とは

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変革の必要性は自覚しつつも、なかなかこれまでのマネジメントスタイルから脱却できない原因は、これまでの日本企業における「マネジメントの常識」も関係しています。高度経済成長期やバブル期は人口急増・画一的社会であり、「よいモノを作って頑張れば売れる時代」だったといえるでしょう。

当時のマネジメントスタイルは、いわゆる「上意下達型」でした。経営者が具体的な指示・命令を下ろし、中間管理職はそれをかみ砕いてメンバーに伝える。そして、メンバーから上がってきた報告・連絡を経営者に伝える。

このスタイルの場合、中間管理職が行うマネジメントはほとんど「メッセンジャー」のようなものだといえるでしょう。事実、当時は金融業界を中心として上意下達の徹底度が高い企業ほど業績がよく、外部からも優良企業だと称賛されていました。

しかし90年代になっていわゆる「バブル」が崩壊し、95年から日本経済は停滞期に入ります。

このような状況で、企業は防衛的な経営に移行していきます。売上が伸びないなかで、なんとか利益を捻出しようと「省力化・合理化・コストダウン」に血眼になりました。この当時に普及したのが「数値目標徹底型マネジメント」です。
経営者は、なるべく具体的な数値目標を設定して現場に下ろすようになりました。

この状況で中間管理職は「不在」になったというより「消滅」してしまったと言っても過言ではありません。つまり、現場に下りて「プレイングマネージャー」になったのです。 

プレイングマネージャーは、明確な数値目標が下りてくるため、どうしても目先の数字を追いかけるようになります。そのため、メンバーの育成やケアなどは後回しにし、売上向上に奔走する状況に陥りました。

このようなマネジメントスタイルで育てられた現代の管理職層は、参考にできるマネジメントのロールモデルが見つからない状況で、変革を迫られているのです。マネジメント自身に自律共創型マネジメントスタイルの経験がないというだけでなく、日本企業は風土として変革の機運が乏しいともいえるでしょう。

マネジメントスタイル変革の拠り所は「らしさ」

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前節で述べた時代変遷の影響で、日本企業の管理職はこれまで自律共創型のマネジメントとは縁遠い状況にあるといえます。

ただしここで考えたいのは、置かれた環境や乗り越えるべき課題はVUCAの時代で共通ですが、乗り越え方は企業・職種、あるいは管理職個々人によって異なるという点です。

世のなかのリーダーシップ論を眺めても「サーバントリーダーシップ」や「オーセンティックリーダーシップ」など、さまざまなものがあります。自ずと、マネジメントスタイルも「コーチ型マネジメント」や「ビジョン型マネジメント」など、一律ではないでしょう。一般的に「この時代に発揮が求められるマネジメントスタイル」はあれど、発揮のしやすさは人によって異なります。

つまり、結局変革の拠り所となるのは「自分はどのマネジメントスタイルで強みが発揮できるか=自分らしさとは何か」というシンプルな問いへの答えといえます。

自己理解が進めば、変革の一歩目が踏み出せる

先ほど時代によるマネジメントの変遷を見てきましたが、現代管理職層は自分について深く内省した経験が乏しい方も多いかもしれません。「キャリア自律」などの概念が薄い時代を過ごしてきた管理職層は、自らの強みや弱みをあらためて客観的に把握することに、変革のヒントがあると考えられます。

そんな内省のサポートになり得るのが、弊社の管理者適性検査「NMAT(エヌマット)」です。NMATは、管理職としての適性を世のなか一般の管理職層と"相対的に" 比較して測定できる適性検査です。

管理職という「役割」をもとに仕事をしている現役管理職の方は、自分の「らしさ」について日常行動を通じての「自分」だと誤認している可能性もあるでしょう。あらためて自分自身の判断の癖や行動特性を把握すると、意外な発見があったと驚かれる管理職の方も多いものです。

特に注目したいのが、NMATでは過去の研究データから、4つの職務タイプ(組織管理タイプ・企画開発タイプ・実務推進タイプ・創造革新タイプ)を設定し、それぞれのタイプにおける向き/不向き・希望する/しないを判定している点です。

一人ひとりの「発揮しやすいスタイル」や「自分が望むスタイル」が可視化されることは、管理職自身の現在地点を浮き彫りにするようなものです。

これらの情報は、本人が咀嚼しやすい表現に変換した報告書「あなたのキャリア開発のために」で、管理職自身に返却することが効果的です。

まずは自身の持ち味・管理職タイプへの向き・不向きや指向という現在地点を確認することで、会社で求められている望ましいマネジメントスタイルへの一歩をどう踏み出すか、地に足をつけて考えられるでしょう。

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変革への踏み出し方は一人ひとりで異なる

今回は日本企業のマネジメントスタイルの変遷も振り返ってきましたが、「風土」や「雰囲気」は目に見えずとも、打破するのはなかなか骨が折れるものでしょう。

例えば米国では、優秀なリーダー・マネジメントこそが「起業」を選ぶといわれています。もともと米国は、「アントレプレナー・キャピタリズム(資本主義)」の国だといわれてきました。社会全体として「ベスト・アンド・ブライテスト(最も優秀な人材)はベンチャービジネスを興すもの」という流れが定着しており、インターネットの時代が始まるとそれが一気に強さを発揮しました。

そのため、「優れた指揮者」は自らの知恵でビジネスを立ち上げる人というイメージにつながったのです。一方、日本や欧州は「大企業キャピタリズム」の比率が高いことが特徴でしょう。

特にネット時代が到来した平成初期の日本には、米国のような人材の流動性や事業を立ち上げる社会の仕組みが整っておらず、優秀な指揮者は官庁や大企業に行くという伝統的な流れから抜け出せなかったといえるでしょう。

このように振り返ると、どのようなマネジメントスタイルであっても、良い面・悪い面があるということも忘れてはならない観点でしょう。望ましいマネジメントスタイルを画一的に捉えるのではなく、自社の管理職層が一歩を踏み出すための個別支援をすることが、実は変革への近道なのかもしれません。

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